次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない
見つめ合い、どちらからともなくフフッと笑い合う。

「では、これでお願いします」

駿介がいつの間にか席を外していた担当さんを呼ぶ。

「このまま、嵌めて帰れますか?」

「サイズはぴったりですから問題はありませんが、数日お待ち頂ければ内側に日付やイニシャルをお入れ出来ますよ?」

エンゲージリングなのだから、そういった刻印をするのが一般的なのだろう。でも担当さんの気遣いを駿介は断った。

「日付やイニシャルは重要ではないので」

そして指輪を私に嵌めたまま、店を出る。もちろん、手はしっかりと繋いで。

「俺が指輪を贈る相手は文香だけだし、文香が指輪を贈られる相手も俺だけなのにイニシャルなんか必要ないだろ」

前を向いたまま、ぼそりと教えてくれた理由に喜びが込み上げる。

「そうだね」

握られた手にギュッと力を入れて握り返した。

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