次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない
そしてこれまた予想通り、駿介は秘書として以上に私にかまう。


⌘ ⌘ ⌘


「常務、植田社長をお連れしました」

午後、予定にはなかった来客を常務室を案内すると駿介は見事なまでのビジネススマイルと態度で出迎えた。
こういうのを見ると、やっぱり私は距離を感じてしまう。駿介は生まれながらに上に立つ人間なのだ、と。

「いきなり申し訳なかったね。所用で近くに来たものだから駿介君の顔が見たくなってね」

「いえ、思い出して頂いて光栄ですよ。植田社長は相変わらず活動的で、是非父にも見習わせたいものです」

ニコニコと人の良い笑顔の植田社長は大介父さんの学生時代からの友人で、駿介や私にとっては取引先の社長と言うより知り合いのおじ様と言う感覚が大きい。
実際、駿介もいつもより随分と穏やかな空気だ。

「文香ちゃんも随分秘書さんらしくなってきたね。大介も駿介君も近くで文香ちゃんに支えてもらえて、心強いんじゃないか」

「いえ。まだまだ力不足で。なかなか社長や常務のお役に立てずに心苦しく思っております」
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