次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない
差し出させた駿介の腕に当然の如く手をかけると、役員室の扉から外に出た。

その瞬間、それまで私達の間に流れていた気安い空気も戯れるような会話も消えて無くなる。ここからの私達は兄妹のように育った仲の良い親戚じゃない。常務取締役とその秘書、もしくは次期当主と彼に相応しい相手が出来るまでの害のない飾り。

浮かべる笑みも美しくて隙のない、弱みを見せない作られた笑み。


2人並んで歩けば、すれ違う社員達の羨望の視線を受けるけど、何も羨ましくなんてない。嬉しくなんてない。

でも、それでも。こうやってとなりに並べるならと私は軋む恋心を押し込める。

きっとこうやって彼の隣に並べる時間は長くないから。許される間はせめて‥‥‥。












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