次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない
ウキウキと作品の解説をしてくれる久美ちゃんの声を聞きながら、ふっと入口に視線を向けた。

華奢なハイヒールを履いてるのに駿介と10センチ近く身長差があるって事は夏希さんは160センチくらいかな。身長だけなら私と一緒くらい。

でもサラリと搔き上げる黒いロングストレートも、エキゾチックで大人な雰囲気も、身体にフィットした赤いワンピースがよく似合うスレンダーなスタイルも、全部私にはないものだ。

私がそのうちの1つでも持っていたら、今の駿介と夏希さんみたいに絵のような2人に見えただろうか。

2人で話す姿はなんだかそこだけ違う世界みたいで、誰も邪魔したり話に入っていったりしない。だから、ずっと2人で楽しそうに話してる。2人だけで。

その景色はとても美しくて、でも同時にとても辛くて‥‥私は涙が溢れる前に久美ちゃんに視線を戻して笑顔を作る。

「ね、久美ちゃん。こっちもみてみよっか?」

そして、2人が見えない場所にそっと移動した。



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