次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない
でも、ようやく佑が入院する事がなくなった頃には私はもう高校生で。親をそんなに必要としていなかったし、蔵本の家に戻って通学が遠くなる事も嫌だった。

そのまま大学生になって、一人暮らしを始めてしまったから。結局、私が蔵本の家で暮らしたのは8年にも満たない。
それでも両親からの愛情を感じるし、私も愛情を持っている。それも國井の家で幸せに愛されて育ててもらったからおかげかもしれない。

愛し愛されて育ててもらったから。
実の両親に捨てられたとか、弟より愛されてないとか、捻くれた考えに陥らずにすんだ。
だから國井の家に行くのと同様、蔵本の家にも行くし、家族としての時間を過ごす。



「佑君、体調悪いのか?」

「ううん、大した事はないみたい。でも元々強い方じゃないからね。無理はしちゃダメだって言ってるのに、ちっとも言う事聞かないの。
今回も折角大学生になったんだからって、母さんの反対押し切って始めたバイトで店長に頼まれるがまま沢山働いて」

母さんから電話で話を聞いた時の事を思い出してプリプリ怒って言ったら、駿介は軽く目を見開いた後にくすりと笑った。
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