次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない
拗ねた口調も可愛らしいなんて、さすが素敵大人女子だ。

「すみません、つい」

こんな風に言ってもらって、まだ堅い口調で話すのも大人の対応ではない。少し砕けた口調と表情で応じると、ようやく夏希さんの顔に笑みが浮かんだ。

「ね、それよりお友達を紹介してよ。初めまして、湊ちゃん」

「初めまして。本日はご招待、ありがとうございます。失礼を承知で単刀直入にうかがいますが、どうしてわたしを名指しでご招待いただいたんですか?」

「み、湊、いきなり何行ってるの!?」

和やかな挨拶をバッサリと切った湊に慌てて声をかけたけれど、言葉に反して本人はどこか楽しそうだ。口元に笑みを浮かべているし、目も悪戯っぽくきらめいている。

「だって、不思議だもの。文香もそう思わない?会ったこともない私を、会話に名前が出たからって理由だけで呼ぶなんて。ですよねぇ?」

湊に問われて、夏希さんもニヤリと笑う。

「招待したの、やっぱり正解だったみたいね。予想以上だわ」
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