パーフェクト・インパーフェクト
✧︎*。


真冬だというのに全身の毛穴からドバドバ汗が噴き出している。

自然とデトックスできてありがたい……などというジョークをかます余裕なんて1ミクロもございません。


5分前のわたし、なんて言ったんだっけ?


もしかしなくてもわたしはきっと今夜ウチに帰れないのだろう。

いや、そう願って申し入れたのは間違いなくこちらだけれど。


いまさら甘っちょろいことは言いませんとも。


仕事柄、おかげさまで普段からボディメンテは完璧なので、どこからでもかかっておいでませ!


「そういえば女の子っていろいろ必要だよな」


知らぬ間に精いっぱいガチガチと噛みしめていた歯で、くちびるを食いちぎりそうになった。


「メイク落としとか、そういう気のきいたもの置いてないから、途中で買ってく? もうコンビニくらいしかやってないけど」

「メ、メイク落とし……!」

「いらない?」


いいえ、とても必要なものです、

そう、お泊まりをするときは絶対的に。


つまり、彼も自分の家にわたしを宿泊させる気でいるということだ。

『朝まで帰さないぜ』を、いまものすごく遠回しに言われたんだ。


「というか、メイク落とし……ないんですか?」

「さすがにないよ。俺は使わないし」


俺、じゃなく、これまで愛してきた数々の女たち、の話をしてるんですけど。

だって女の子を家に連れこむのはもちろんはじめてのことじゃないでしょう。


女の子のお泊まりグッズを心得ている男の人って、この世にどれくらいいるのかな。

メイク落とし、という単語が最初に出てくるのってふつう?


ぜんぜんわからない。

なにせわたしはこの人以外にあまり男性を知らない。


この人のことも、まだまだ知らないけど。

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