パーフェクト・インパーフェクト
✧︎*。


「ええっ、こんな大役をわたしが任されていいの……!?」


突如として舞い込んだ大仕事の報せに興奮して、思わずがばりと顔を上げる。


完全に仕事モードのいけちゃんと目が合った。

涼しい奥ぶたえの目が細くなり、にやりと笑む。


「上月杏鈴はいま女子だけじゃなく、“男子高校生”にとっても憧れの存在だからって。運営側からの名指しオファーだよ」


いつだって、どんなお仕事だって、すごくうれしい。

それに優劣なんて絶対ない。


でも、今回の名指しオファーほどどぎまぎして、わたしでいいのかな、と思うことは、これまでなかったかもしれない。


「ひょええ……じゃあまずは勉強しないと、“男子高校生ミスターコン”について!」


ぜんぜん興味がなくて、というか、あまりにも縁のないイベントだったから、これまでその存在すら気にも留めていなかった、“全国男子高校生ミスターコン”。

一般の高校生の男の子たちが全国各地から集まり、そのなかからいちばん魅力的な子を決めるという、夢のありすぎるムネアツな催しだ。


そして、なんと、

なんと、である。


今回、優勝者に贈られる副賞として、この上月杏鈴が選ばれたのである。


「ていうか、浮かれてるようだけど。杏鈴、ちゃんと内容わかってる? 副賞ね、ほっぺにチュウと、一日デートだからね」

「わ、わ、わ、わかってるもん!」

「もしかしたら杏鈴よりも高校生たちのほうが経験豊富かもね……」


仕事なんだからしっかりしてよ、と。

今度はマネージャーじゃなく、お姉ちゃんみたいな顔をしたいけちゃんが、浅いため息をついた。


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