パーフェクト・インパーフェクト
✧︎*。


最後の夜からまるっと1週間、連絡できなかったし、彼からの音沙汰もなにひとつなかった。


思いたっていきなり訪ねたのは、このまま自然消滅になってしまうのは本当に嫌だと思ったから。

午前0時少し前の来訪を、彼は門前払いせず、ドアを開けて迎えてくれた。


「こんな時間にひとりで出歩いちゃダメだよ」


変わらない、優しい第一声。


「……ごめんなさい」


どうしても玄関に入れず、その場でうつむいたわたしの手を、大きな手のひらがそっと引っぱった。


「おいで」

「っ、いいの?」

「仲直りしよう」


あんなのぜんぜん、喧嘩じゃない。
だから“仲直り”じゃない。

わたしが一方的に、全面的に、謝らないといけないことだよ。


だけど彼はわたしをリビングに連れていくと、ソファの上でぎゅっと抱きしめた。

いつもの定位置。
安心する腕のなか。


「……たくさん、ごめんなさい。わたし、ほんとにほんとに、最低なこと言った」

「いいよ。すごい酔っぱらってたのはわかってたし」

「う……でもお酒は免罪符にならないから」

「えらいね。大人なこと言うんだな」


言葉とは裏腹に子ども扱いしつつ、ぽんぽん頭を撫でられた。


「あのときは俺もかなり大人げなかった。ごめんね」


大人げ、なんて。

そんなのを持ち合わせていないといけないと思いながら生きているなら、そんな必要はないんだよって、いますぐ言ってあげたい。


でも、わたしのほうが年下だから、そんなエラそうなことは言えないな。

それとも彼は、わたしが年下だから、そんなふうに思ってしまうのかな。


情けない。
はじめて年下なんかやめたいと思った。

年上のお姉さんになって、彼に、なりふりかまわず甘えさせてあげられたらよかった。


ごめんね。

< 328 / 386 >

この作品をシェア

pagetop