恋をするならマエナラエ
1 脱田舎宣言




 徹夜だって苦じゃなかった。



 憧れの38階建てのビルの21階で、全面ガラス張りの会議室から豆みたいに小さく見える大都市を見下ろすのは好きだった。


 これまでの自分の頑張りが無駄じゃなかったんだって知れたから。


 出張で突然ベトナムへ行けと命じられたり、気が付いたら香港に居たり、訳の分からない理不尽だってあったけどそれでも耐えられた。


 いつかはこの会社初の女プリンシパルになってやるんだって意気込んで、毎日先輩同期にしごかれながら、新入りにごぼう抜きにされるのに怯えながら、

 だけどそんな毎日も嫌いじゃなった。




 「……へ?」




 ≪アジア部門撤退 日本支社解体≫



――私をクビにしたのはいつも私を怒鳴りつけていた上司でもアメリカの大学院卒の人事でもなく、


 "時代"ってやつだった。




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