再会からそれは始まった。
確かに、新崎所長の言う通りだ。

帰り道の車の中、ズバリそう新崎所長に言われた事が花には効いたようでずっと考え事をしている。

俺が「いつも自分のことしか考えていない」と、花に訴えられた事も思い出す。

焦ってばかりで結論を急ぎ過ぎているのは、俺だ。

新崎所長は、全部わかっていた。 大人だよな、やっぱり。

「南さん。僕が手塩にかけて育ててきた部下だ。
まあ、さっきも言ったけどこいつはロクでもないけど、僕はこいつの才能だけはかってるんだ。
あなただって、あのビルが出来上がるまでのこいつの仕事を見てきただろ?
花もさ、向こうで自分が何ができるか考えるんだ。

僕、そのプレゼンがちゃんとなされないなら、二人の事認めないもんね。」

新崎所長は、ふふふと笑ってから、はあとため息をついて呟く。
「若いっていいな・・・。」





「やっぱり、行くのいやになったか?」
俺は前を見て運転しながらそう言う。

花は、首をふる。
「・・・・・・・。」

「俺は、もうこの先、花無しの人生なんて考えられない。」

花は、びっくりして助手席から俺の事を横から見上げる。そして、ゆっくり前に向き直って微笑む。
「私だって。」

「・・・・・・・。」

「まだ少し時間はあるし、私、ちゃんと考えてみるよ。 所長もアドバイスや協力はしてくれるって言ってくれたし。」

「新崎所長って、かっこいいなあ。」
俺なんかほんとまだまだだよな。
花の将来の事や彼女の人生のことをきちんと考えてなかった自分に腹がたつ。

「そうだね。良い上司に恵まれてた。改めて感謝。個人的には、あんなに私のことボロクソに思ってるなんてことも知らなかったけど。ねえ、あの言いようはないと思わない?」

俺は大爆笑して
「いや、納得しちゃったけどな。」

「もうっ!」
花は顔を真っ赤にして怒っている。


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