再会からそれは始まった。

秘書 松山 SIDE

気が付いたら、またまた磯崎花のペースにのせられる私。

どうしてなのかしら。いっつもこうだわ。

すっかり私もビールの缶を空けて、磯崎花に心を開いてつい口数も多くなってしまう。

「まだ、決まったわけではないわ。でも、スティーヴンがそうしたいの。 
早く後継者を決めたい。彼は、南さんが一番適任だと思ってるのよ。
ついでに、一人娘と結婚もして欲しい。
そのくらい公私ともにスティーヴンは、南さんを気に入ってるの。」

「南くんはそれに応えるつもりでしょう?」

「さあ、ずっと彼ははぐらかしていたみたいだけど。 そのあたりは彼が何を考えているかわからないわ。」

磯崎花は、しょんぼりとした目で体育座りをして、ぐすんと鼻をすする。
私は、あきれて磯崎花をみる。

「ねえ、もともとあの人は住む世界が違うのよ。そう思わない? だから誰のものにもならない。 
周りにたくさんの女がいたけど、みんなそう思ってる節があったわ。
だから、彼に別れを告げられても最後には、みんな良い思い出だったって納得しちゃうのよ。」

「まあ、私はそれ以前の問題ですけど。 だから、友達でいいかなあって。
友達だったら、ずっとつきあっていける。なのに、なんかしらないけど、好きになっちゃって。」

私は肩をすくめて
「それなら、私だってそうよ。仕事として、部下としてなら、彼と一番近いところにいられる? そうじゃない?」

彼女は、ガバっと顔をあげ私を見る。
「やっぱり松山さんも、南くんのこと好きなんだ。」

「うるさいわね。仕方ないじゃない。確かにいい男なんだもの。」

またうじうじと膝に顔をうずめる。
「ここにもまた最強ライバル。」

「だーかーらー、ライバル!? 一緒にしないでよ!」

「スンマセン。その通りです。」

「ま、もしスティーヴンの言う通りになったら、友達だろうが秘書だろうがもうそれで終わりよ。」
松山さんは、缶ビールをぐっと煽る。

「松山さんなら秘書としてついてきて欲しいっていわれるでしょ? ものすごい信頼厚いんだから。」

「ばかね。もうそこで諦めるわ。私だっていい歳だし。日本で別の仕事について、別のいい男見つける。」

「それも、非現実的ですね。」

「あなた、今なんて言った?」

「冗談ですって。だって松山さん仕事出来過ぎるし、美しいし完璧すぎるから、釣り合う男がなかなか見つかるとはおもえないんですー。」

傷心女二人の飲み会は、遅くまで続いた。
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