冷徹副社長と甘やかし同棲生活
 副社長にとって私は恋愛対象から外れているようだ。
 だからこそ、家に住まわせることになんの抵抗もないのだろう。

 別に副社長のことが好きってわけでもないのに、なんだか心が重い。
 恩人の娘だからなんとか言ってたけれど、間接的に魅力がないと言われているようでショックだった。

……でも、そんなことは関係ない。

 私が出来ることがあるなら、副社長が私に求めてくれていることがあるなら……それにこたえるだけだ。



「いえ、住み込みで、副社長の代わりに家事をさせていただきます!」


「ああ、よろしく頼む」


 副社長はあの面接のときのように優しく微笑んで、手を差し出した。
 私は彼の大きな手をしっかりと握ると、同じくらいの力で握り返してくれた。

 それだけのことが嬉しくて、心が温かくなった。
 副社長のために頑張ろう、そう素直に思えた。


――こうして、私と副社長の秘密の同棲生活が始まった。

< 59 / 321 >

この作品をシェア

pagetop