年上の彼。
「先輩、起きてたんですか?」

「俺の勘違い?両想いだと思ったのになぁ〜」

「……え?」

「俺、千秋ちゃん好きなんだけどな〜?」

「嘘つき…… だって彼女いるじゃないですか」

「ん?俺いないけど?」

「だって、あの受付のっ……」

抑えきれない気持ちが先走り発してしまった後、思わず手で口を押さえた。

「あぁ 噂ね?あれ、実は妹なんだよね」

「い、妹?……え、だって苗字が……」

「あいつ、結婚してるからね〜」

なるほど、だから違うのか。

確かにかなりの美人さんだったし、どことなく似ている気がする。

「で、俺のこと…… 嫌いなの?」

「……っ…」

「好きでしょ?俺の事?」

「なんか…… 先輩、ズルいです」

「だって千秋ちゃん押しに弱そうだし?」

「ッ!?」

「図星か。それに天邪鬼そうだしね?」

なんか全てお見通しすぎて逆に怖い。

「す、……好きです、よ?……たぶん」

「俺は大好きなんだけどなぁ〜」

「………なんか誘導されてる気がする」

「さすが千秋ちゃん、頭の回転が早い!」

褒められてるのかディスられてるのか。

なんか妙に悔しくなって、笑っている先輩の頬めがけて唇を押し当てた。

色気も可愛さのカケラもないキス。

動きの止まってしまった先輩は私の顔を見て目を見開いている。

「千秋ちゃん、たまに突拍子もないことするよね?」

「だって、なんか悔しいんだもん」

優しい表情で笑った先輩の顔は今まで見たどの顔よりも艶のある笑顔で。

そして私にこう言ってくれた。



「そういう所が、たまらなく愛おしいんだ」



fin.

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