その件は結婚してからでもいいでしょうか
第一章

三次元の男は汚い


職業は「少女漫画家」。
あっごめんなさい、見栄はりました。

職業は「少女漫画家を夢見るアシスタント」。
及川美穂子(おいかわみほこ)二十六歳です。

みてください、この職場!
目黒区にある2LDKの高級マンションのふた部屋を、どかんとぶち抜いて作ってあるんです。
一つはアシスタントのための作業スペースで、もう一つは売れっ子漫画家「桜よりこ先生」のご自宅。
白を基調とした清潔なお部屋に、明るい南向きの窓。四名のアシスタントのためにデスクが用意されていてます。

ちなみにわたしの席はここ。一番奥まった場所、です。
だってわたし、アシスタントとしてここに入ったの、つい最近ですから。下っ端なんですよ。

でもわたしにとって、この職場はまさに理想。
ずっと担当編集さんに、お願いしてました。
「桜先生のアシスタント募集があったら、ぜひわたしを入れてください」って。

だってわたしが今恋に落ちている相手は「中島悠馬」くん。
桜先生が月刊誌に連載している、学園青春恋愛漫画の男の子。

誰よりも早く、悠馬くんに会える。

家に帰れなくても、何日徹夜しても、それでもそれでも。
ここは最高なんですよ!

それから、桜先生は、天才ってだけじゃなく、しっかりもしてます。

締め切りを遅れるってことは絶対にないんです。もちろん、今連載を二本抱えているから、仕事はキツキツだけれど、でも締め切りには必ず上がるから、アシスタントもお休みをちゃんともらえてます。作業中の食事は出してもらえるし、高級チョコレートの差し入れなんかもしてもらえる。

さぞや完璧な美人なんだろうなあ。
まだ一度も会ったことないけれど。
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