その件は結婚してからでもいいでしょうか

胸元に唇が触れると、美穂子は思わず身を丸めた。

「ダメだ、手をどけろ」

その声にぞくっとする。いつもの先生の声じゃない。言葉の奥に欲望を感じる。

ああやばい。すごく、なんだか……。

胸元をかばっていた美穂子の腕を強引にベッドに押し広げ、片手でブラのホックを取る。

美穂子は、胸が緩んだとたん、どうしようもない不安に駆られた。他人に自分をさらけ出す恐怖。

「まっ、待ってくだっ」
美穂子は先生の腕を振りほどこうとしたが、男の力は想像以上に強くびくともしない。

あっという間に、先生は美穂子の胸を掴んだ。

美穂子は初めての出来事に、身体が動かない。

先生の指。
ペンを握るあの指が、わたしの。
うそ、すご……。
先生の指がどこに触ってるか、全部わかる。

「んんんんー」
声が漏れる。

自分の声じゃないみたい。

「声、出せよ」
先生が笑いを帯びた声で、美穂子の耳に囁いた。

何、このSっぽい感じ! いつもの優しい先生じゃないっ。

「んーっ」
美穂子は全力で声を抑えた。

先生は笑って美穂子の唇を唇でふさぐ。

セックスをする男女の、濃厚なキス。

行為の最中にするキスって、こんなに情熱的なんだ。先生の唇。舌。全部に美穂子が犯されてるみたいな気持ち。

気が狂いそう。

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