その件は結婚してからでもいいでしょうか

先生の唇が耳から、首筋に下がる。
熱い息。

ああもう、駄目。

美穂子は先生の背中に手を回して、シャツをぎゅっとつかむ。
掴んでないと、今にも倒れてしまいそうだ。

「美穂子」
先生の熱い息が耳にかかる。「今すぐ、入れたい」

美穂子の心臓が大爆発を起こした。
全身が痺れる。

「せんせー!」
山井さんの声がして、はっと目が覚めた。
先生はとっさにカーテンを引いて、美穂子を隠す。

ガラスとカーテンの間に挟まれて、美穂子の心臓は発作寸前だ。

「先生、お待たせしましたあ。お弁当のことで、吉田さんがダダこねて」
山井さんの明るい声がカーテン越しに聞こえてきた。

美穂子はパニックになりながら、慌ててブラを元に戻す。

「あれ? 美穂ちゃん、カーテンの後ろですか?」

ばれてるし。

「ああ、えっと」
先生はしどろもどろだ。

美穂子は乱れた髪を手で直して、そっとカーテンの陰から外に出た。

「かくれんぼ、してました」
苦しい言い逃れ。
「そうそう、かくれんぼ」

先生もとりあえず美穂子に合わせてくれる。

「かくれんぼ? 大の大人が?」
山井さんの声には、すごい疑いの感じが混ざっている。

「好きなんですよね、先生」
「そうそう」

美穂子はペコッと頭をさげると、大急ぎで部屋を出て行こうとした。

「あ、美穂ちゃん、めがね!」
「はいっ、すみません」

美穂子は先生の手からめがねを奪うと、一目散にアシ部屋へと逃げた。
怖くて、山井さんの顔は見られない。

自分の席にどしんと座って、ツップした。
まだ胸がばくばくしている。


三次元って、半端ない。
すごすぎる……。

< 144 / 167 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop