君のカメラ、あたしの指先

提案と承諾

 ダメだ。山田が話している言語がもはや日本語に聞こえない。

「あの、あたし、本当に訳が分からないんですけど」


 英語飛び越えてヒンドゥー語あたりなんじゃないかってくらい理解できない。
 
 このままでは会話が成立しなさそうだ。たとえ通訳を通したとしても、相互理解は困難なものと思われる。

 あたしは一つ深呼吸をした。
 落ち着け。これじゃ埒が明かない。
 自分のペースに持っていくのよ。


「とりあえず……整理したい。簡単なところから明確にしていっていいかな」

「そうだね。一気に色々言いすぎたね俺も」

 とりあえず合意が得られてほっとした。ここから通じなかったらどうしようかと思った。

「紙に書き出していくね」

 宣言してから、あたしはルーズリーフを一枚取り出してそこに今日の日付を書き込んだ。
< 48 / 66 >

この作品をシェア

pagetop