君のカメラ、あたしの指先
『あー、有紗? あたし山田と付き合うことになったから』

 朝練から帰ってきた有紗に、単刀直入にそう切り出した結果がこれ。
 メールで話がある、と予告するのも気が引けて、唐突に言ってみた……んだけど、やっぱり絶句のち絶叫という予想通りの反応をされたのでした。

「酷いよ、あゆちゃん。私の事そんなに信頼できない?」

「いや、そういう訳じゃ」

「そんなに私の恋バナがうるさかった?」

「違、」

「ああそっか。気づかなかった私がいけないんだ」

「いや、だから」

「分かってる。ごめんね、でもショックが隠せなくて」

 いや、気づくのは無理でしょ。
 あたしだって昨日初めて名前を知った相手だよ。
< 61 / 66 >

この作品をシェア

pagetop