教えて、うたくんのこと。


クラスメイトのうたくんは、たまに体調不良で授業を抜ける。


それを見て、

最初はホントに体調が悪いのかなと思っていた。


うたくんの友達は、

『お前ほんと虚弱体質だな』なんて言う。


女子の中には『私が保健室つきそうよー!?』と張り切る子たちがいる。


結局『歩けるから平気』と一人で保健室へ向かう。


でも、私は、知っている。


彼は……


うたくんは――保健室へは、行っていない。



――あれは、一ヶ月前のことだ。



「え、宇津木くん? 来てないけど」


保健委員として、保健室に用事で呼ばれた。

それが火曜日の五時間目のあとのことだった。


教室を出るとき保健室に向かうと言っていたうたくんの姿がなかった。


わたしの問いかけを不審に思い眉間にシワを寄せた養護教諭の顔を今でもハッキリと覚えている。


それから、もう4度目になる。

うたくんが授業を抜けたのは。


きまって火曜日の5時間目。

つまり、皆瀬先生の授業なんだ。


こんな偶然、4度も続くだろうか。

皆、不思議に思わないのだろうか。


皆瀬先生の授業の前までは教室にいて、始まる前にどこかへふらりと消えて(友達には保健室に行くとかトイレなんて告げている)、終わればどこからともなく戻ってくる。


……そんな謎を。


そう、これは、謎なのだ。


……それも、穏やかでなない、謎。


わたしは、うたくんの謎が解きたい。


うたくん。

君は今、どこにいますか――?

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