冷徹部長の愛情表現は甘すぎなんです!
2.彼のことは好きじゃない!
はじめて、雰囲気というものに流されて一夜を過ごした相手は、優しいと思っていたのに酷くて最低な人だった。
気になっていたし、好きかもって思ったけど……わたしは甘い言葉と容姿に騙されていただけ。悔しいので言い返してから去ろうとしたのに、信じられない事態になってしまった。

早く仕事を見つけたかったけれど、まさか由佐さんのいる会社で働くことになるなんて……。


「とりあえずよかったね、仕事見つかって!」

そう言った夏穂子は、ご飯の上にのっているえびの天ぷらにかぶりついた。
同じビルで働くことになったわたしたちは、平日の仕事終わりに待ち合わせて、駅近くの和食料理店でご飯を食べながら話をしていた。
面接の日に再会した由佐さんのことから新しい職場のことまで、溜まっていたものはたくさんあった。

「でもまさか、由佐さんがRelay Lifeで働いていたなんてね。しかも営業課の課長って、紘奈の上司ってことでしょう? 三坂さんのお店の人だって思っていたのに、びっくりだなぁ」

そう、彼がエレベーターで『俺の営業課』なんて偉そうに言っていたのは、営業課の課長で社内でも一目置かれた仕事のできる人だったから。
市崎《いちざき》由佐、二十九歳。働きはじめて数日、由佐さんはあの完璧な容姿で仕事をこなして若いながらも課をまとめ、取引先の女性の顔を赤くさせて、社内の女性社員の視線を集める、やり手課長だということがわかった。
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