君が残してくれたもの
雨とピアノ
季節は流れるように変わっていく。

空だっていつも同じなんて時、1度もない。


でも、今日も、雨。

昨日も、一昨日も。



梅雨、ってどうして毎年決まってやってくるのだろう。

髪はうねるし、なんとなくだるい。


授業だってなんとなく、ぼんやり過ぎていく。

はぁっと、ため息をついた私に、

「いつもでしょ?梅雨のせいにしないの」


樹里が冷めた目で私のことを見ている。


「楽しいこと、って。何だろう」


楽しいことする、とは言ったものの、何をどうすれば楽しいんだかわからない。


「楽しいことへ向けての準備中に楽しみって思うこともあるけど。基本、楽しいことって、する前に思うものじゃなくない?やってみて、思うもんでしょ」


確かに。


「やってみたいって思うこと、やってみなよ」


樹里はそう言って、私に軽く手を振って部活へ向かった。



やりたいこと、ねぇ。


ふらふらと、放課後の校舎を歩く。

遠くから聞こえる、掛け声。


あれは、サッカー部。

あれは、野球部。

あれは、バレー部。


活気のある声に包まれている、この時間が好き。


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