君が残してくれたもの
体育祭と恋煩い
待ちに待っていたわけでもない、体育祭がやってきた。


「今日は体育祭かあ。ごめんね見に行けなくて」

母は今日も、眠そうにダイニングテーブルに肘をついている。


「もう高校生だし。見に来ないでしょ」


お弁当を詰めながら、さらっと聞き流した。


「毎日ごめんね、お弁当作ってもらっちゃって」


母はまだ半分しか開いてない目のままコーヒーに口をつける。


「いいよ、自分のお弁当のついでだし」


お弁当を作ること自体も苦ではない。


朝が弱い母は、自分の身支度だけで朝の時間を使い果たしてしまう。


二人だけの家族だから。

朝もまともに食べて行かない母の体が心配なのだ。

だからと言ってそんなことをそのまま伝えることもできない…めんどくさいお年頃なの。


「ちゃんと栄養採らないと、老けるよ」

私の言葉に嫌な顔をする。


「やめて!もう、本当に敏感だから、老けについては」


耳を塞いでイヤイヤとした。

子どもみたいなんだから…


「だから、こうやって野菜たっぷりのお弁当作ってんでしょ」

ふうっとため息をつく私のことを、怒られた子どもみたいに見てる…

母は他の家のお母さんとはちょっと違うのかもしれない。

できないことも多いし、仕事以外では本当に頼りなくて、こっちの方が心配になることも多い。


でも、姉妹のように居られるこんな親子で良かったと思ってる。

私の意見をいつだって尊重して大切にしてくれていることを、感じるから。

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