君が残してくれたもの
「僕、パン食い競争出るよ」

海晴くんが、にこにこ笑ってるから、ついつられて笑顔で、

「そうなの?」

って聞き返した。

なんだかいつもより声が高くなっちゃって…ちょっと咳払い。

「パン、何が好き?」

今度は落ち着いて、

「メロンパン」


そう答えると、私の頭をクシャクシャっとして、先を歩く友達のもとへ走って行った。


海晴くんが触れたとこ、なんだか熱くなってきたんですけど。


後ろ姿を見ながら、頭に手をやると…


「ふうん」


耳元で、声がしてビクッとなった。


バッと顔を見ると、


「へえ、いつからそんな親密に?」

樹里のドアップだ。

思わず後ずさりしてしまった私を、樹里は目を細めて見てる。


「な、なにがでしょ?」


樹里の濃い顔立ちで、こんな間近に来られると迫力…


「話してないこと、あるでしょ?」

樹里のこの視線から私は、逃れられずに…


「へ?」

と、変な声が出ただけだ。


そんなマヌケな私に、樹里はにっこり笑って、


「今日はたっぷり時間もあることですし」


強引に肩を組み、門をくぐった。



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