君が残してくれたもの
図書室の秘密の話
「ピアノ、ねえ」

昨日の不思議な体験を樹里に話すと、樹里はまた険しい顔。

樹里は机に頬杖をついたまま、

「オウジはピアノが弾けるのね…なんだか想像できない。ピアスに茶髪でピアノ?一体どんな人間だったんだろうね」


そう言って、それを聞いた私は頷くと、2人して遠い目で窓の向こうを見ていた。

空は雲ひとつない青空。


「そういえば、今日は久保川来ないね」

樹里が教室を見渡す。

ランチタイムに最近は常連だったというのに。

海晴くんの姿は教室にはない。


「ねえ、ぶっちゃけどうなの?なずなと久保川って」


樹里が声を潜めて聞いてくる。


樹里のお弁当からバジルの香りが漂う。

チキンの香草焼。

今日も手が込んでるなぁ、って樹里にいちいち言わないけど。

樹里もあまり喜ばないし、母親との関係性もそれぞれ違うから。


でも、お弁当は毎日しっかりチェックしてる。

参考にもなるし。


樹里の質問にまだ答えてなかったことに気づいて、


「どうって、どうもないよ」

笑って答えると、

「どうもないことないでしょ」

ふわっと答える私とは反対に、樹里は早く核心に迫りたい、といった感じ。

< 81 / 181 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop