イジワル御曹司の執着愛~愛されすぎて逃げられません!~

遠子はクスクスと笑って、半ば強引に振り返り、直倫の頬に手を乗せた。


「なのに私、高熱で覚えてなかったり、酔っぱらってたりで、すっかり忘れてたり……ほんと、全然覚えてなくて……」


確かに遠子は、直倫の言葉を覚えてはいなかった。

あれからずっと、いくら直倫が決心し、必死になっても、眼中にすらなく、意識すらしてもらえなくなった。

自業自得だと思っていたが、それでも遠子は

「ごめんね」

にっこりと笑ってくれた。


その笑顔を見たときに、直倫はまた、遠子の優しさに胸がつまって、息をすることすら忘れてしまう。

遠子は許してくれているのだと、切なくて、苦しくて……。

なにをどうしたって、遠子を幸せにしなければいけない、それが自分の生まれてきた意味なのだと、直倫ははっきりと自覚したのだった。


「トーコ、愛してる……」
「うん」


直倫の切羽詰まった声に、わかってるといわんばかりに、髪が撫でられる。


「抱いていいか」


そう言いながら、すでにパジャマのボタンは外しにかっているのだが、止められない。


(たぶん俺は一生、遠子が好きで、ずっと囚われたままで……ああ、そうか。これは呪いなのか)


だが、それが事実だとするのなら、どんなに幸せなことだろう。

いっそ永遠に呪われていたい。

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