ガード
「・・・そうだったんだ。理由は聞かない。けど、辛かったんだね。」

「それ。」

「え?」

「そのセリフ。」

「え?」

「華は俺が言ってほしいことを言ってくれる。お手伝いさんたちは気を使ってほめてばかりだけど、お前は率直に何でも言う。それが嬉しいの理由かな。」

淡々という彼に私は全身から火が出そうだった。

「あ、りがとう。」

何とかお礼をたじたじと言う。

人からほめられたことなど、なかったに等しい私は、翔のそんな物言いも新鮮だった。

意を決して、つぐんでいたばかりの口を開く。

「私も、ありがとう。」

「・・・なんで?」

「今まで、そんなに褒めてくれる人なんていなかったから。」

「そうか。」

「おやすみ。」

照れくさすぎて早く通話を切ろうとする。

「おやすみ。」

その夜は火照った頬のまま眠りについた。

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