ガード
「・・・泣いてる。」

「泣いてない。」

「泣いてるって。」

「泣いてない。」

翔は強情な私にあきれたのか、深いため息をついてこう言った。

「悪かった。」

「・・・。」

「俺も今朝初めて気づいたんだ。」

「アローグループ会長の息子、水浦翔です。」

そう言って右手を差し出されても、彼の言葉を理解するまでに数秒かかる。

しかし私の脳は彼を受け入れることにした様だ。

受け入れるしかないといったほうが正しいだろうか。

ポロリとこんな言葉が口から洩れる。

「あなたのボディーガードの、山田華です。」

誰もいないオフィスで、こうして私たちは二回目の初めましてをした。
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