ガード
「これなに。」

厳かに車庫の扉が開くと、何台もの車がのっそりと顔を出した。

私の反応はこれでもいいほうだろう。

普通なら声を上げることもできないかもしれない。

私たちが毎朝見るロールスロイスは、車庫から出してあったものなので、実際に車庫の中を見たことは一度もないのだ。

早速古川さんが口を開いた。

「今日はいかがいたしましょうか。」

「いつものロールスで行くんじゃないんです?」

「お友達とご一緒とのことなので、翔様が運転されてはいかがでしょう。」

「それもそうか。じゃあ・・・パナメーラで。4シーターだし。」

「かしこまりました。」

ここまでの二人の会話ですでにツッコミと疑問が生じる。

しかしここはぐっと呑み込み、こっそりとあずさに耳打ちした。

「何、メンソーレって。」

「・・・パナメーラな。一文字もあってない。」

気を取り直してもう一度聞く。

「何、パナメーラって。」

「ポルシェって言ったらわかるか?」

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