あまりさんののっぴきならない事情
 やっぱり入りたくないな、と思ったが、門を開けてくれた。

「お母さんは、尊(たける)と買い物に行っている。
 ちょっと待ってなさい」

 はーい、と言って、玄関の方に行こうとすると、背中に冷たいものを押し当てられた。

「家に入ることは許さん。
 庭に回れ」

 銃を当てられたのかと思ったが、ゴルフクラブだった。

 いや、当たり前なのだが、こんな事態でなくとも、常に殺気を感じる父親のせいで、そう感じてしまう。

 憲兵に、ほら歩け、と言われるように、背中をゴルフクラブで突かれながら、庭に行く。

「そこに座れ」
と言われ、庭の白い椅子に腰掛けた。

 テーブルに母親が用意していったのか、紅茶のセットが置いてあったので、
「飲んでいい?」
と言うと、好きに飲め、と言われた。

 父親はまだいらないと言うので、ポットからお湯をそそいで、お茶を淹れ、ひとり飲んだ。

 目の前でまたゴルフの練習を始めた父親を、ゴルフボール飛んで来ないだろうな、と思いながら眺めていた。

 無言で打ち続ける父親の背中を見ていたが、なんとなくあの日の海里の茶羽織りの背中を思い出し、訊いてみる。

「お父さんはさ、なんでそんなにいつも自信満々なの?」
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