そのキスで、忘れさせて









遥希の家に久しぶりに帰った。

広いその家は、心なしか散らかっていた。

洗濯物が散乱していたり、ペットボトルが置いてあったり。

そして、その大理石のキッチンにも野菜の欠片が散らばっていた。





「賢一のおかげで、なかなか料理も出来るようになった。

微塵切りと千切りのしすぎで腱鞘炎だ」




遥希は得意げに言った。




「……つっても、あいつのレシピしか出来ないんだけど。

何個か収録も終わってて、もうすぐ放送される」





そんな遥希に、



「ドキドキだね」



あたしは言う。

ドキドキだけど、きっと上手くいくと信じている。

遥希はファンの心と胃袋を掴むことが出来るのだろう。



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