そのキスで、忘れさせて




ぶち壊したい。

あたしの幸せをぶち壊したみたいに、この二人を。

でも……

なぜだか分からない。




「お幸せに」




あたしは笑顔で立ち上がっていた。

誠はあたしを驚いて見る。

そして、



「今まで、ありがとう」



静かにその場を立ち去る。






我ながら驚くほどの大人の振る舞い。

まるでドラマのような。

だけど、頭は空っぽだった。

何も理解出来ない。

ただ、誠はもう、あたしのものではないということだけ。

その事実が痛いほどあたしにのしかかる。

涙すら出ず、時折車のヘッドライトに照らされるその道を、亡霊のように歩いていた……





< 6 / 384 >

この作品をシェア

pagetop