肉食御曹司に迫られて
「奈々、顔が見えない。」
というと、奈々の手からグラスをとり、テーブルに置き、その手を掴み自分の方へ引き寄せた。
ソファーに倒れこむように、湊の腕の中に、奈々は収まった。
湊は、奈々の指に自分の指を絡ませると、
「やっと、本当に抱きしめられる。心の底から。なんか、実感が今までわかなかったけど、奈々に触れて、ようやく少し実感した。」
奈々も、絡められた手とその言葉に胸がぎゅっと音を立てた。
「ホントは、親父に許可をもらった時に、あの、パーティー会場ですぐ抱きしめたかった。それを抑えるのに苦労した。」
と静かに笑った。そして
奈々の耳元で囁いた。
「ようやく、奈々と会ったのは必然だって言える。」

「・・・!!」
その言葉に、奈々は涙を浮かべた。
(- やっと、本当の自分でいられる場所を見つけた。)
奈々は安堵した。

奈々の顔を、湊は覗き込み、真剣な瞳を向け、
「好きだ…。」
と言うと、そっとキスを落とした。

そして、ゆっくりと奈々をソファーに組み敷くと、優しくキスを落として行く。奈々の涙を辿りながら。
「奈々、せっかく綺麗だけど…ドレス…脱がすぞ…。」
奈々は、恥ずかしくなり、湊から少し目を逸らした。そして、小さく頷いた。
「きゃっ!」
奈々は小さく声を上げた。
奈々の体はふわっと、上がった。湊の顔が近くなった。
お姫様だっこのような形になり、奈々は少し恥ずかしくなり、港の首に腕を回し、顔を胸の中に埋めた。

湊は、奈々をベッドルームへと運んだ。

窓から差し込む柔らかい月の光がベッドを照らしていた。
ベッドにそっと奈々を下ろして、湊は奈々を見つめた。
奈々は、そっと湊の頬に触れると、
「湊と会ったのは、必然じゃなく、運命だと思ってる。」
と微笑んだ。
湊はそんな、奈々がかわいくて、愛しくて…。優しく微笑むと、キスをひとつ落とした。
そして、鼻先が触れそうな距離で、
「これからは、俺の隣で、笑っていてほしい。返事は?」
「もちろん。あなたの隣にいたい。」
その答えに、湊は奈々を抱きしめると、
「やっと、捕まえた…。奈々のいる場所はここだから。」
と言うと、ドレスのファスナーに手をかけた。
しかし、手を止めると、
「…やばい、俺の方が緊張してるかも。」
そう言って、湊はもう一度奈々をギュッと抱きしめた。
「何を言ってるの?百戦錬磨のくせに。」
奈々も、得も言われぬ感情をごまかすように、少しふざけて言った。
「こんなに、触れるのが怖いのは初めてだから。こんな気持ちになったのは、初めてだよ。」
「ホントに?でも、あたしも、こんなに、抱きしめられただけで、心臓が壊れそうなのは初めて。」

「大人なのにな…。」
と二人でふっと笑った。

すぐに、湊は真面目な顔になり、
「余裕なかったら、ごめん。」
とだけ言うと、奈々の唇を激しく奪い、そのままベッドへと、二人は落ちて行った。
奈々も、湊に回した腕に力を込めた。
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