交際0日のプロポーズ~純情男子の恋の傾向と対策
木枯らしの頃

「じゃあな。」

「あぁ、また後で。」



ピカルと教室の前で別れる。

この時間俺たちは別々の講義を取っているのだ。



比較的小さな4階の4A教室。

毎週1回俺はここで物理の講義を受ける。



扉を開けると、既に中にいた数人が振り返った。



「おぅ、酒井。」

「よぅ。」

「ちゅーす。」



口々に声を掛けてくれる彼らに

「あぁ。」

と手を挙げる。



前から4番目の中央の通路際の席。

俺はいつもここに座る。

バッグを置いていつものように腰掛けると、通路を挟んだ斜め前から女の子が華奢なフレームの眼鏡をケースから取り出しながら振り返る。



「酒井君こんにちは。」



今泉弥生子さん。

この物理クラスにただ一人の女子生徒。



と言っても、そもそもこのクラスは受講生が6人しかいない。



が、人数が少ない分講師の中村先生は俺達を可愛がってくれていて、特別授業と称してよく授業前にファストフード店でみんなにお茶を奢ってくれて、一緒に受験に関係あることもないことも雑談したりする。

お陰で俺達6人は受験生らしくもなくまぁ仲良く楽しく切磋琢磨させてもらっている。
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