運命の人はいかがいたしますか?
第1話 今日は厄日
「別れよう。杏は俺がいなくても大丈夫だけど、結菜ちゃんは俺がいなくちゃダメなんだ。」

 圭佑は当たり前のことを言うようにほざいた。

 久しぶりに会おうと呼び出されたカフェ。そこに着いて注文したコーヒーがきた数秒後の発言がこれだ。

 もちろん私は去っていく男に泣きすがるような女じゃない。

「そうね。分かったわ。別れましょう。私には圭佑よりも相応しい人がいるわ。」

 自分から別れ話をしてきたくせに圭佑はぐうの音も出ない顔をしている。

 がたいのいい体と甘いマスクで女うけする圭佑は身長こそ杏と変わらない。

 ただ杏が172センチと女性にしては大きいだけだ。

「杏といると俺のプライドとか自信とかがどんどん無くなっていくんだ…。やっぱり杏もそう思っていたんだな。」

 男としてのプライドをへし折られ肩を落として立ち去っていった。

 おいおい。カフェ代置いてってよ。そういうところがダメなんだよ。

 心の中で舌打ちをしてお会計を済ませるとカフェを出る。

 可愛いというよりクールビューティといわれる杏はその呼ばれ方に恥じない、すらっと長い脚で颯爽と歩く。

 白いブラウスにひざ丈のフレアスカートのモスグリーンがひらひらと揺れた。

 せっかく運ばれてきたコーヒー。あれをぶっかけてやれば良かったかしら。いやいや。あれで正解よね。

 きれいに巻かれたロングヘアーを風になびかせ、完全勝利をおめた気分でアパートに戻った。


 アパートに戻るとすぐにインターホンが鳴る。

 誰だろう。こんな土曜の午前中に。やっぱり女性の一人暮らしなのだからカメラ付きのインターホンに変えるべきだろうか…

 そんなことを思いながら返事をする。

「はい。」

「あの~すみません。先ほど圭佑さんにお振られになった杏様ですか?」
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