運命の人はいかがいたしますか?
第27話 飼い犬に手を噛まれる
 夕方。久しぶりの買い物からの帰り道。ご飯をどうしようかと頭を悩ませていた。

 エルと夕ご飯を何にするか相談したり、一緒に作るのもいいかも。

 そう思うと楽しい気分になってアパートのドアを開けた。でも部屋に入ると誰もいなかった。テーブルにメモがあるだけだ。

「すみません。今日も先輩のところに行きます。今日は本当に先輩のところに泊まることになるかもしれません。智哉ガブリエル  鍵は郵便受けです。」

 楽しい気分は一気に沈んでしまった。

 こんなことで一喜一憂する自分に笑えてしまうが、もう落ちた気持ちは浮上させられなかった。

 何もする気になれなくなった杏はコンビニに向かう。おにぎりに手を伸ばすと自然と笑みがこぼれた。

 真っ直ぐアパートに帰る気になれず少し遠回りして帰る。

 いつもは通らない道には公園があった。

 きっと夕方までは子供たちが元気に遊んでいるのだろうが、今はベンチにカップルらしい人影があるだけだ。

 若いっていいな。そんな視線を送ると座っている人と目が合う。ヤバッと目をそらそうとしたその目は知っている瞳だった。
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