君とゆっくり恋をする。Ⅰ【第1話 〜第5話】(短編の連作です)



「ろくでもない企画なんかじゃない!!」


結乃はムキになって、北山の言葉を否定した。
どんなかたちであっても、敏生が関わっている企画が『ろくでもない』はずがない。彼はどんなときでも最善を尽くす人だ。結乃は彼のことを、心から信じていた。


突然語気を強めた結乃を、北山は驚いた顔で見つめた。その顔を見て、結乃も少しきまりが悪くなる。


「仕事を成功させるために、周りが見えなくなることもあるんだよ。頑張ってる人のことを、そんな風に言っちゃダメだよ」


結乃の言葉を聞いて、北山の顔つきも少し穏やかになった。エレベーターが到着して、ドアが開く。それから二人は黙々と、ダンボールを運ぶ作業に専念した。


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