君とゆっくり恋をする。Ⅰ【第1話 〜第5話】(短編の連作です)



――……もしかして、あの時の男子は、芹沢くんだった……?


うつむいて掃除をしているその男子の姿が、ぼんやりと目に浮かぶ……。
でも、記憶が曖昧で、その男子の顔をよく思い出せない。


――……でも、もしそうなら、芹沢くんは高校生のときから、私のことを知っていてくれたの……?


そこまで、思考が勝手に独り歩きすると、結乃の胸にキュンと微かな痛みが走った。甘い感覚が満ちてきて、それは次第に淡い期待へと変化し始める。


一日働いた仕事の疲れも吹き飛んでしまった。
家に帰ってからも、結乃の胸はずっとドキドキしていて、早く明日になってほしいと思った。

明日になって、また敏生に会いたいと思った。



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