君とゆっくり恋をする。Ⅰ【第1話 〜第5話】(短編の連作です)


成績優秀だった敏生は有名大学に進学したが、結乃には同じ大学に行ける学力などあるはずもなく、その〝想い〟も大学時代の4年の間に、遠い思い出になろうとしていた。


しかし、運命のときはきた!

結乃にとっては奇跡のような出来事が起こり、内定をもらったこの会社。その入社式のときだった。


――……せ、芹沢くんだ……!!


式場に、なんとあの芹沢敏生がいたのだ!

結乃は、この時ばかりは、本当にこれはもう〝運命〟だと思った。この時から、自分の前に拓けている道は、バラ色に輝いていると思った。それはもう、ありえないほど順調なラブストーリーが、入社式の間中、結乃の頭の中では展開されていた。


たしかに、頭の中でどれだけ明るい未来を思い描くのかは、結乃の自由だ。だけど、そう旨くいかないのが、現実というもの。

入社式の後に開かれたレセプションの会場で、歓談の時間に乗じて結乃は敏生の姿を探した。同じようなスーツ姿の新入社員の中でも、敏生の姿はやっぱり際立っていて、すぐに見つけられた。


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