君とゆっくり恋をする。Ⅰ【第1話 〜第5話】(短編の連作です)



「……あっ……!」


結乃がマフラーの行方を探して立ち止まる。敏生も一緒に振り返ると、マフラーは階段の中ほどに落ちていた。


「俺、取ってくるから!」


と、敏生が一足飛びに階段を駆け上がる。結乃は階段の下で、その敏生の動きを見守る。


マフラーを手に、再び敏生が下りてきたときには、すでに電車はホームに来ていて、乗車客も乗り終えていた。


「さあ、急いで!」


敏生が結乃の手を取った。

今、自分の身に起こっている全てがまるでスローモーションのように動いて、結乃には夢のように感じられた。夢だったら、覚めないでほしいと思った。


そして、結乃は敏生に手を曳かれてホームを走り、閉まりかけてるドアの間に滑り込む。
二人はホッと息をつくと、お互いを見つめ合って、微笑みを交わした。

二人を乗せた電車は、今ゆっくりと動きだした……。





  ― 第2話 完 ―




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いつもこの作品をお読みくださり、本当にありがとうございます。
この後、この第2話「君と決意のチョコレート」の敏生目線のお話を、第3話として更新していきます。

展開がほぼ同じなので、小休止的なものになりますが、結乃sideでは語られなかった敏生の心情が明らかになります。
どうぞ引き継ぎ、読んでいってくだされば幸いです。

2018.2.13
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