君とゆっくり恋をする。Ⅰ【第1話 〜第5話】(短編の連作です)
「いいと思います。私たちが憩えるのはもちろん、お洒落なIT企業みたいで、新卒の人材確保にも〝売り〟になるんじゃないですか?」
敏生の説得力のある意見を受けて、主任も課長も一様に表情を和ませる。
それから、主任と課長が世間話のようなことを始めたのを見計らって、敏生もそっと結乃へと囁きかけた。
「どんな感じになるのか、今からとても楽しみだよ。君もこの企画に関われるの?」
結乃は花が咲いたように嬉しそうな顔をして、頷いた。
「予算に余裕があれば、ちょっとお菓子なんかもおけると、皆さんに喜んでもらえるかなぁ…って思ってるの」
「お菓子?」
「うん、クッキーとか、マシュマロとか」
クッキーにマシュマロ…。まるでホワイトデーの定番に、敏生の思考が反応した。
「…マカロンとかは?」
と、半ば無意識にその問いが口から飛び出した。
「え?マカロンは…、ちょっと高価だから難しいかも。芹沢くん、マカロン好きなの?」
「…うん、まあ。……君は?」
「私も、マカロンは大好き。ラズベリーの甘酸っぱいのが一番好き」
そう言いながら微笑む結乃の可愛らしさに、敏生の中にも甘酸っぱい感覚が満ちてくる。