不知火の姫
――――あれから二週間が過ぎたが、不知火を襲撃した敵の正体は未だ分からなかった。
それどころか、被害は増えていた。
敵は巧妙で、主に力の無い末端の者たちを狙う。幹部たちや中級以上の者には決して手を出してこないのだ。
いくら不知火でも、全員が強い訳では無い。そのわずかな隙を、確実に攻撃してきていた。
「――――ったく! ほんとムカつく!」
放課後に来たファントム。今日は何度目かの襲撃の報告で志貴が早退してたから、光流さんと来たんだけど……
中では志貴が珍しく本気で怒っていた。彼の近くにあった椅子を、イライラをぶつけるようにガツンと蹴り飛ばす。
「何で僕の隊ばっかりやられてんの?! もう六人目だよ?! すっごい理不尽! 僕の隊より弱いやついっぱいいるのに!」
そう叫びながら、またガツン。どうやら今回やられたのは、志貴の部隊の人みたいだ。
光流さんはため息を吐きながら、倒れた椅子を直していた。
「志貴が隊の訓練をサボってるからでしょう……」
チクリと言った光流さんの言葉が、志貴の動きを止めた。