不知火の姫
蓮さまに家まで送ってもらったあの日――――

結局、葉月には会わなかった。蓮さまも家の前で帰ってしまった。

葉月の部屋は私と同じ二階だけど、たまに出てくる足音を聞くと、私はじっと息を潜め。次の日曜日も彼の事を避けて部屋に閉じこもった。


だって、何て言ったらいいのか分からない。


葉月が私の事をどう思っているかは知らないけど、急に兄妹だと言っても。受け入れてくれるのかどうか、不安だった。

小鳥遊のおじさんの浮気で出来た子供だなんて……

嫌われても憎まれても仕方がないと思う。


それが、怖かった…………





月曜日の朝。

登校はいつも葉月に送ってもらっている。それを突然断るのも不自然だから、いつも通りバイクで送ってもらった。

でも、何も話はしなかった。

葉月は葉月で最近あまり話さなかったから、私も話しかけはしなかった。

無言の登校は、彼とせっかく繋がりかけた心が離れてしまったみたいで……

悲しかった…………




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