不知火の姫
「鈴ちゃんを一人にしなければ、いいんでしょぉ? 志貴くんだけだと大変だけど、女の子同士ならトイレにも一緒に行けるし~」
愛澄ちゃんは、私に『もうお友達だもんね』と、無邪気な笑顔を向ける。
私はどうしていいのか分からなかった。『あず』って呼んでと言われたけど、本当にそう呼んでいいのかも分からないくらい。
だって……友達なんていた事無いから…………
「……そうだなぁ、流石に僕もトイレの中までは行けないし」
志貴はすっかりバケットサンドを平らげて、今度はシナモンロールに手を出している。
「じゃあ、あずちゃん、頼めるかな?」
蓮さまがそう言うと、愛澄ちゃんはまたにっこりと笑った。
「はぁい! あず、頑張りま~す!」
…………不思議。
不知火に関わってから、周りにどんどん人が増えてくる。
今までずっと、一人だったのに。
私はちゃんとした仲間じゃないのに。
仮の姫なのに。
どうしてこんなに良くしてくれるんだろう……