不知火の姫
もっと別の事で、まるで――――私を恨んでいるみたいな……
「葉月! あんたもこの女に騙されてるのよ!」
「やめてくれ! 母さん!」
もみ合う二人。
「――――この疫病神!」
美乃利さんはそう叫ぶと、掴んでいた私の腕をぐいと引いた。
あ! と思ったけど、体制を立て直す事は出来なかった。
引かれた勢いでそのまま階段を転げ落ちる。何度か頭を打ってしまい、クラクラする……体に力が入らない……
私は階下にぐったりと横たわったまま、起き上がる事は出来なかった。
「――――鈴!」
葉月の声……
意識を失う瞬間、彼から貰った月の鈴の音が、チリンと聞こえた気がした。
◇◇◇