10年愛してくれた君へ【続編】※おまけ更新中
その日を境に木下さんともう一人の男性がよくお店に来るようになった。
「やっほー藍ちゃん!また来たよー!」
「あ、いらっしゃいませ。お二人はこの辺りに住んでるんですか?」
トレーに乗ったドーナツをレジ打ちしながらそう問う。チラッと冷たそうな男性に目をやると、ばっちり視線が交わった。
こうして私が彼を見ると高確率で彼も私を見ている。だけど、何も言葉を発しない。
…正直不気味だ。
「あぁ、俺と山下は中学からの友達で、地元もここなんだ。"木下""山下"で"大自然コンビ"って中学の頃は言われてたな?山下」
「…あぁ」
彼…山下さんの声初めて聞いた。木下さんとは性格が正反対に思えるけれど、二人きりの時はどんな話をしているのだろう。
「春兄とは最近会ってますか?」
「大学卒業してからはあんま会えてないかなー。よく暇な時に電話してるけど。めっちゃ迷惑がられてるけどな!あははっ!」
春兄が態度に出すなんて珍しいなと思いながら話を聞いていた。
「あいつ、藍ちゃんの前ではどんな感じ?」
「え、春兄ですか?すっごく優しいですよ?昔からそうです」
「…やっぱ好きな子にはそうなんだな。あいつ意外と冷たいところあるぞ?」
冷たい春兄なんて想像できない。木下さんといるときの春兄、かなり気になる…
会計を済ませお皿にドーナツを移す。それをイートイン用のトレーに乗せて木下さんに差し出した。
「ごゆっくりどうぞ」
イートインスペースに向かう木下さん。しかし、山下さんはレジ前に立ち止まったままだった。
「あ…あのぉ」
バチっと目が合う。冷たい眼差しは変わらないが、少し開いた口は何かを言いたげに見えた。
「っ…あぁ、いや」
しかし、特に何かを言われるでもなく、山下さんもイートインスペースへと姿を消す。
山下さんと目が合うと心臓が跳ねるようにビクッとする。どちらかというと"恐怖"に近い。