大切なもの【完結】
「いくっん…」



蝕むようなキスに息をするのも忘れてしまう。



「彩香、どれだけ好きにさせれば気が済むの?」


「そんなのあたしだっていっ…んっ」



あたしに言葉を最後まで言わせることなく郁人の唇が降ってくる。



だんだんと深くなっていく〝それ〟はやがてあたしの思考を奪って、そのまま座ってられなくさせてしまう。


あたしの身体が限界を感じて、ベッドに倒れそうになったとき、郁人が手でそれを支える。
そして、あたしをそのままベッドに沈ませて彼もまた唇を唇以外のところを持っていく。



「あっ…」



変な声がもれる。



「っ…」



あたしの声が漏れた瞬間郁人がハッとなったのようにあたしから体を離す。



「…郁人?」


「ごめっ…間違えた」


「間違え…?」



なに、間違えたって。
そういうことをする時が来たんだって思ってしまったあたしは間違いだったの?


郁人の言葉に自分だけだったことに気がついて顔がかーっと赤くなる。

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