大切なもの【完結】
「隠さないで見せてよ。いろんな郁人が見たいよ」



郁人の顔をあたしに向かせる。



「彩香のせいなんだからな」


「え?」


「今日だってずっと可愛いし。もう俺ほんと歯止め効かなくなる」



そう言ったかと思えばもう1度あたしを丸太にすわらせる。



「郁人?」


「黙って」



郁人から熱い口付けが降ってくる。



「いくっ…」



熱い舌が入り込んでくる夢中になってしまうキスに自分の全てがなくなってしまうような
自分が自分でなくなってしまうような。
そんなどうしょうもできない感覚があたしを支配する。



「んっ…」



舌でかき乱されている口の中で
いままで感じたことのない感覚で
声だって出てしまうし、もう何もできない感じになってしまう。



「…ごめん。止めらんなくて」



頬を紅潮させて少し息を切らした郁人が目の前にいる。



「あたし、全然余裕ない…」



郁人はこんなにも余裕なのに。

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