寄生虫
熱心さ
アレルギーはなかった。


それはあたしにとって予想外の結果だった。


本来なら喜んでもいいのかもしれないけれど、この腕のかゆみの正体はわからずじまいと言う事になる。


それは不安要素を加速させるだけで、全く嬉しいものではなかった。


この食物は食べない事とか、この植物には近づかない事。


なんてわかりやすく説明できるもののほうが、ずっとよかったと感じられる。


「アレルギーはなかったって、どういう事?」


家に戻って検査結果を伝えたところ、バラは眉間にシワを寄せてそう聞いて来た。


「わからない」


あたしは左右に首をふるしかなかった。


病院ではいつもよりも強い効能のあるかゆみ止めを処方されただけだった。


アレルギーではないのだから、そのくらいしか対処のしようがないのだ。


「とにかく清潔にするしかないのかしら……」


あたしの隣ではお母さんも困ったように頬に手を当ててそう言った。


「清潔にし過ぎるのも逆効果って事もあるしね」


バラは難しそうな顔をしたまま天井を見上げた。


つられて見上げると蛍光灯に虫が一匹止まっているのが見えた。
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