女嫌いと男性恐怖症
第29話 失ったもの

「余計なこと、言っちゃったかな」

 陽菜は遥に話していたことを、思い出していた。
 何気なく話したことなのに、段々と暗い顔になっていく遥。

「余計ついでに、遥ちゃんはその中でも特別だと思うわよ。って、言えば良かったのかな」

 それこそ本当かどうか分からないことを、言っていいのかどうか。

 ブツブツ独り言をつぶやいている陽菜に、直樹が苦笑した。

「なんだ。遥ちゃんに、アキのことでなんか言ったのか?」

「うん、まぁ。でも直樹に話すと、面白がるだけだから話したくないわ」

 それでも直樹は、ククッと笑っている。

「周りがくっつけようとしたって、上手くなんていかないし、周りが別れさせようとしたって上手くいくことだってある。何をしたって無駄ってもんさ」

 まぁそうかもしれないけど。

 あっけらかんとしている直樹に、悩んでいた自分が馬鹿らしくなる。

「それにしても、会うたびに遥ちゃんは。アキは気づいてないだろうけど、苦労するかもな」

「何が? 遥ちゃんが、魔性の女になるとでも言いたいの?」

 ハハハッと笑うと楽しそうな直樹は、目に涙まで浮かべている。

「まぁある意味では、そうかもな」

 クククッと愉快そうに笑う直樹に、付き合ってられないわ。と、肩をすくめた。

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